コメント

やくみつる(漫画家)

繰り返される不当判決は「司法の犯罪」ではなく、一義に審理にあたった裁判官個々人の許しがたい背任行為ではないか。
映画「約束」は、従前の司法ドキュメンタリーから明確にその糾弾に舵を切った。
だが覆すのもまた裁判官個人にほかならない。
その出現は待つのではなく、導き出すものだ。

青木 理(ノンフィクションライター)

本作の中に登場する人々の「顔」を見よ。
半世紀に渡る無実の訴えを掬い上げようと奔走する人々の顔。それを平然と蹴飛ばす人々の顔。
私は、あなたは、どっちの顔をしているか。のっぺりと平板な顔の隅に、保身と偽善の気配が漂ってはいないか。あの裁判官たちのように。

江川 紹子(ジャーナリスト)

必ずや生き抜いて濡れ衣を晴らしてやるーー奥西勝さんのこの強い信念が、仲代達矢さんの肉体を通じて、ぐいぐいと迫ってきます。
息子の無実を信じ、帰ってくる日を待ちながら手紙を書き続ける母タツノさん。樹木希林さんの姿を借りて蘇る、切々たる母の思いに、涙がこぼれます。
裁判所や検察は、奥西さんの獄中死を待っているのかもしれませんが、そんな不正義は絶対に許さない。映画を見て、この思いを新たにしました。

郷田マモラ(漫画家/「あしゅらみち」)

想像してほしい。無実の罪で半世紀も自由を奪われた「人間」の苦悩を。
息子を信じ続けた「人間」の孤独を。圧倒的な取材力とリアリティ、 そして素晴らしい俳優さんたちの演技に魂を揺さぶられ、涙が止まらなかった。
冤罪を生んでしまうのも「人間」であり、その所業にたとえようのない恐ろしさを感じてしまう。
ぼくは、同じ「人間」として言います。「奥西さんを獄中で死なせてはいけない!!」

森 達也(映画監督・作家)

日本の刑事司法がこれほどに歪みきった要因のひとつはメディアにある。ならばメディアには期待できない。僕も含めてそう考えてしまう人たちは、絶対にこの作品を観るべきだ。メディアはここまでできる。これほどに強い力を持つ。 一貫して司法の歪みを問い続ける阿武野プロデューサーと齊藤監督は、また新しい地平を拓いた。見事だ。正直に書けば嫉妬するけれど、でも認めないわけにはゆかない。彼らは仕事を終えた。次は観た側が動かなければ。

阿曽山大噴火(裁判傍聴芸人)

「どうせ再現ドラマでしょ?」「そんなの昔の話だろ」
「言っても、今の司法はちゃんとしてるよ」と思った人は見るべき。
すべてひっくり返されるから。 人間の判断なんて実にあいまいなものだ。
あいまいでいい、映画が始まって120分後、司法に判決を下せ!
奥西さんですら信じてる司法に判決を下せ!

鈴木 泉(名張再審弁護団団長)

死刑の恐怖に曝されながら無実を叫び続けて半世紀
「悲惨」、「悲壮」、「究極の人権侵害」、奥西勝さんの生涯はいかなる言葉をもってしても表現しきれるものではありません。
奥西勝さんの無実を晴らす闘いを進めてきた名張再審弁護団は、一審無罪判決以来実に28年ぶりに2度目の無罪判決ともいうべき「再審開始・死刑執行停止決定」(2005.4.5)を勝ち取りました。現在、最高裁でこの決定を確定させる闘いが続けられています。
奥西勝さんの不屈の半生を描いた「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」をできるだけ多くの皆様にご覧いただくよう願ってやみません。

川上 園子(アムネスティ・インターナショナル日本 活動マネージャー)

半世紀という気の遠くなるような年月の中で、ひたすら息子を思いやる969通の手紙を書き続けた母。
再審無罪を勝ち取るために闘い続ける特別面会人や弁護団。彼らの思いをあざ笑うかのように再審の扉は閉ざされたままである。
それでもあきらめることはできない。奥西さんが獄中で無実を訴え続ける限り。
「約束」は、日本の刑事司法に巣食う問題を、ドキュメンタリーと映画を組み合わせることによって見事にえぐり出している。

鈴木亜英(日本国民救援会 会長)

 見返りを求めない支援者の惻隠の心。科学で真実に迫る弁護団。
未だ頂を見ない名張事件は奥西さんの命を刻々と削りながら進む。
 無実の者を死刑にしてよいのか? 
仲代達矢が演じるこの映画はこの根源的な問いかけを私たちに迫る。

(順不同、敬称略)